注)2023はオンラインショップでの販売はしておりませんので、全国の取扱酒販店様でどうぞお求めください。
〇2023シーズン所感
2023は、冬季のエゾ鹿等の食害から始まり、夏季には30℃前後の猛暑が1ヵ月ほど続くという余市では異例の天候、ブドウ達にとっても寝苦しさから解放されたのも束の間、秋の収穫期には鳥害の発生やプレス機のトラブルなどの試練が続き、厳しいシーズンとして幕を閉じました。
今期も継続的に低温発酵仕込をテーマとして据えています。空調における「投入エネルギー資源を最小限」にすることで、環境への負荷を低減すると同時に、地下蔵でのより自然な温度帯から生まれる、「この土地ならではのワイン造り」を目指します。
〇2023シリーズ共通
2023の3アイテムはアルコール分が13%前後と2022にやや近いイメージ。造りにおいては、プレス機トラブルにより収穫したブドウ(主にピノノワール)を搾汁出来ない事態に、当初想定をはるかに超える数量と期間、樹脂タンクにて炭酸ガス浸漬することになり醸造工程において「醸し」の影響が想像以上に出ることになりました。熟成においては2020以来久し振りに一部アイテムに木樽熟成品をブレンド。気候変動等の影響あり、年々諸事難易度が高まる中、年毎の品種特徴等を踏まえた全体最適と調和を模索、主体品種の割合等に固執することなく柔軟に対応、苦味、複雑さ、バランスのとれた辛口白ワインに仕上がりました。可能な限りの亜硫酸添加量の低減に向けた自家取組を続けて参りましたが、2023は前年2022に続き、全アイテム無添加(サンスフル)。亜硫酸低減の効果か、以前に比べれば早めに開いてくる印象がある一方で、熟成潜在力が不明(5年程度か)、纏まりと深みを引き出すためにも、最低でも1年、出来れば2~3年ほど熟成させると大きく変化して来ると期待します。どのように熟成変化するのか今後見守って頂ければ幸いです。
〇モンガク谷2023楢 nara
フィールドブレンド・シリーズ「モンガク谷」のピノタージュ主体のアイテム、「楢(なら)」。希少品種ピノタージュ主体の、世界でも稀にみるブラン・ド・ノワールとして、
ヨーロッパにおける「オーク(楢)の存在」(※)のように、皆様に寄り添って頂けるようなワイン造りを目指します。
セパージュ:ピノタージュ65%、シャルドネ13%、ピノグリ10%、ソーヴィニヨンブラン6%、ピノノワール他6%
アルコール分13.0%、MLF有、内容量750㎖、生産本数2705本(ロウ色:緑系)
小売希望価格:4,300円/本(税抜)
テイスティングコメント:色は透明感のある淡い黄金色。香りはフローラルノート、ライチ、熟したグレープフルーツ、レモン、ハチミツ、ナッツ等。味わいはグレープフルーツの皮のような苦みの中に特徴的なスパイシーさ、ほのかな渋みと苦み、出汁のような旨味、軽やかな酸、心地よいアフター。余韻は中程度、辛口、ミディアムボディー。亜硫酸添加量はゼロ、潜在的な不安定さがある一方、グラスに注ぐたびに表情が変わる。やや大きめのグラスで若干高めの温度帯、抜栓数時間後が好印象。少なくとも1年、出来たら3年以上の熟成を期待(12月試飲時点)。
< 楢について >
英名 :Japanese Oak
分類 :ブナ科コナラ属
原産等:北海道から九州に至る日本全国、アジア北東部に分布
誕生花:2/19、9/5、9/27
花言葉:歓待、愛国心、勇敢、自由
その他:・壺から「酒の香気」があふれる象形から楢という字が成り立つ
・古都「奈良の都」の周囲にこの木の林が出来たのが由来とする説あり
・酒造りの長(おさ)や一族を束ねる長のこと
・ヨーロッパの木々の中でひと際大きく立派になるため「森の王」と呼ばれ、
生命力や長寿の象徴として崇められてきた
※「オーク」:
古来、ヨーロッパの人々はこの木の木陰を住みかとし、この木から滴らせる蜜を
なめ、その果実であるどんぐりを挽いてパンを作り、養豚の飼料にはどんぐりを
与え、その大きな枝で小屋をつくり、さらにはオーク材を用いて堅固な船をつく
るなど、たくさんの恩恵をオークから受け取っていました。オークの豊かな森が
、人類に食料を与えることで、人はそこを集落とし、定住した森で豚を飼い、材
としてのオークを利用することで住居をつくり、やがて道路や船を作りました。
人類の歴史はオークとともにあり、農業文明、産業文明はオークととも育ったと
言えます(引用)。
※「ピノタージュ」:
フランス品種であるサンソーとピノノワールの交配種であることから、当方ではフランス「系」品種と位置付け。世界での栽培面積は当社推定で0.1%内外。南アで最南端・最も冷涼なエリアかつ南ア屈指の高級ワイン産地であるウォーカーベイでは高品質なピノタージュが造られており、その粘土質土壌から造られるピノノワール・シャルドネに世界のブルゴーニュ愛好家が注目との情報も。
※「酋」:楢のつくり(旁)で、「長い間熟成させた酒」、の意味がある
※ 楢の価格について:
楢の主体品種であるピノタージュは、依然として世間一般的に評価の低いマイナー品種です。言い方を変えると、世間から見向きもされない可哀そうな品種、私たちからみれば以前からまるで「いじめられっ子」の様に映っています。ご縁があって開園当時、栽培からお付き合いが始まったこの「ピノタージュ」に何とか日の目を見させてあげたい、そんな思いを胸にこれまで畑や蔵で向き合って来ました。一方、「フィールドブレンド(混醸)」についてもやはり同様に感じていて、近年「単一ワインが常識」の世界において(やや認知度が上がって来ているものの依然)相手にされない「いじめられっ子」。その個性と可能性をもっと知ってもらいたい、私たちがフィールドブレンドに特化している一つの理由がここにあります。それぞれに良さがある、それをお互いに認め合う、そしてお互いに補完し合う、目指すべき「多様性と調和の世界」。「ピノタージュ×フィールドブレンド」≒「いじめられっ子×いじめられっ子」≒それが「楢」。楢に込められた私たちの思いと、(赤でなく)辛口白として表現されるそのクオリティーを世に問うて来たこの5年間。お陰様で、今ではモンガク谷シリーズの中で「楢」に最も高い評価を付けられる方々が出てきており、また様々な評価の声を頂くようになって来ました。今季の楢は、シャルドネ主体の栢の価格と同等となっております。
皆さまに寄り添って貰い、そして育んで貰えるワインになるよう一層の研鑽を続ける考えです。
〇ワイナリー紹介
モンガク谷ワイナリーは、2018年に始まった北海道余市町登地区にある「フィールドブレンド」に特化したワイナリーです。ブドウ畑は、耕作放棄地を再生の上、2012年に植栽を開始、樹齢は古いもので10数年。ワイナリー建屋は、札幌軟石の外壁で囲まれた「半地下の石蔵造り」。皆様に北海道・余市におけるフィールドブレンドの可能性と奥深さを感じて頂けたら幸いです
●フィールドブレンド・シリーズ「モンガク谷」
フィールドブレンド・シリーズ「モンガク谷」は、主体品種別に造り分けられる、辛口白の主要3アイテム、及び試作的アイテムである桧から構成される、自然発酵中における品種等の要素の多様性が生み出す香味の可能性を追求する混醸シリーズ(全てのアイテムが自園産フランス系7品種から造られる)。
余市のテロワールが生み出す、綺麗で広がりのある酸を基調としつつ、繊細ながらも、黒ブドウによってもたらされる軽妙なタンニンが程よい骨格と立体感を演出する特有の辛口・混醸ワイン。フードフレンドリーであることが最大の特徴のひとつ。フィールドブレンドならではの複雑かつ一体感のあるアロマは、多様な食材や、出汁、ハーブ、スパイス等を巧みに使い、繊細ながらも、複雑で、重層的な風味を生み出す料理と好相性。やや大きめのグラスでゆっくり温度を上げながら、その変化を楽しみ、繊細な香りと味わいを存分に引き出して頂けたら幸いです。
●私たちのワイン造り
私たちは、標高の高い自社一枚畑に異なる品種を植え、フランス系7品種のブドウを「混醸(こんじょう)」、全てのアイテムが7品種から構成される。主に以下3点をイメージ、野生酵母による自然なワイン造りを目指しています
1.冷涼産地らしい酸味、2.適度な苦味、3.複雑な香味
※「混醸」・・・ 複数の原料品種を少なくとも発酵初期段階までに混ぜて醸造すること
※「7品種」・・・ピノノワール、シャルドネ、ピノタージュ、ピノグリ、ソーヴィニヨンブラン、ピノブラン、ゲヴェルツトラミナー
※当方ワインは、無濾過・無清澄のため、瓶内にオリや酒石、また若干の気泡が出やすくなっています。ややにごりを感じるかもしれませんが、品質には問題ございません。澱・酒石が気になる場合は、必要に応じてデキャンタージュをお願い致します。
※可能な限りの亜硫酸添加量の低減に向けた自家取組を継続中(2022、2023は
全アイテム0ppm無添加)。お取扱いにはくれぐれもご配慮願います。
●ワインの名称
2018から「ワインの名称」を私たちの大好きな「木」の名前とし、それをシリーズ化
数多あるワインにそれぞれ個性があるように、「木」にもそれぞれ個性があります。
木の個性に「ワイン」と「思い」を重ねて命名しました。全国津々浦々には、木をはじめとする「自然物」の名前にちなんだ、珍しい地名や人名も数多く存在、日本らしさが表現される一つの形だと捉えています。私たちのワインが少しでも多くの、各地の方々にお受け止め頂き、そして向かい合って頂けたら幸いです
●ラベルのデザイン
ラベルとして選ばれた絵本の原画が山の神様の「夜祭り」を表現したシーンであることから、2018の自家醸造開始を機に、従来のラベルをシックなトーンに更新。色とりどりの丸玉は集った神様たち、お月様を背後に佇むシンボルツリーの杤(とち)の木と神様たちが表現された夜景が、まるでクリスマスツリーのよう。7つの品種から1本のワインとして生み出されるモンガク谷のフィールドブレンドのイメージがこの原画にシンクロすることからラベル原画として採用されました。また、臆病な幼子の勇気が描かれたこの絵本の英名は「The tree of courage」(勇気の木) 、次の世代のためにも、日常の中のほんの小さな、自分だけのチャレンジを慈しみ、そして明るく、焦らず、じっくりと歩んで行きたいものです
●フードフレンドリーなペアリング
ぺアリングは面白い、例えば「酸」でいえば、食材かソースつまり料理自体に酸がある「調和型ペアリング」あるいは(酸のある)ワインと(酸のない)料理が口中で結び付くことで完成する「補完型ペアリング」など、料理とワインのペアリングにおいて、個々人の好みのペアリングは実に様々。これまでの少ない経験から言えば、食材やソース(味付け)に一定以上の「旨味」と「酸」、そして「複雑さ」を少しだけ持たせると、モンガク谷ワインとの相性が一層向上する印象があります。フードフレンドリーで守備範囲が広く、日本料理の「八寸」のような、季節や地域性の光る趣向が凝らされた、逸品の数々にもそっと寄り添ってくれると期待されます。
帆立貝、海老、牡蠣などの海鮮をはじめ、魅力ある多様な旬の食材と「ソース」「出汁」の優しい味わいが、複雑かつ重層的に広がる料理、山菜や野菜・魚や豚等の内臓類のような「苦み」のある食材、ニンニクなど具材の持ち味を最大限に引き立ててくれる「ハーブ類」、トマト(野菜)やキノコなど旨味のポテンシャルがある植物性食材、調味料関係では、スパイシーなオリーブオイル、ミネラル豊富な岩塩、旨みが引き立つ醤油などの発酵性調味料等がお薦め。旨味の増強は、食材自体あるいは食材の組合せ等による相乗効果や前調理(乾燥・塩漬け・発酵・酵素利用等)、タンパク質の変性利用、すなわち加熱(速度・度合・表面・低温調理等)or酸を利用した非加熱調理・酵素利用による旨味増強等々、料理の世界の広がりは無限大で魅力的です。
(参考):旨味成分は大きく3系統(アミノ酸系・核酸系・有機酸系)に分類。昆布・野菜
類、発酵食品に多く含まれるグルタミン酸(アミノ酸系)。核酸系はリン酸を含むグアニル酸(干したキノコ類等)とイノシン酸(煮干し、鰹節、魚、肉類等)。窒素を含まない有機酸系は貝類に代表されるコハク酸。
食材/ソース × 旨み × 酸 × 複雑さ(苦み・塩味・スパイス/ハーブ等々)
モンガク谷ワインとの素敵な組合せ(ペアリング)を見つけたら、是非共有頂けると嬉しいです。