2023.01.16
  • モンガク谷2022 杤 – tochi –
  • 注)2022はオンラインショップでの販売はしておりませんので、全国の取扱酒販店様でどうぞお求めください。

    〇2022シーズン所感
    2022は、遅めの雪融けと試験的な春剪定の取組み等が重なり、例年にない多忙な春のスタートとなりました。その後、雪融けが遅かったわりには開花がやや早め、また秋口に向けた糖度の上昇が緩やかだったことから、品種によるバラつきが大きかったものの、収穫時期はほぼ例年並み、ブドウの質量ともに良好なシーズンとして幕を閉じました。
    今期も継続的に低温発酵仕込をテーマとして据えました。2021より3週間遅い12月8日に床暖房を微弱でスタート。空調における「投入エネルギー資源を最小限」にすることで、環境への負荷を低減すると同時に、地下蔵でのより自然な温度帯から生まれる、「この土地ならではのワイン造り」を目指します。

    〇シリーズ共通
    2022の3アイテムはアルコール分が13%前後と2021にやや近いイメージ。造りにおいては、2021に比べわずかに低温管理、穏やかな発酵を意識、ステンレスタンクのみでの熟成。気候変動等の影響あり、年々諸事難易度が高まる中、年毎の品種特徴等を踏まえた全体最適と調和を模索、主体品種の割合等に固執することなく柔軟に対応、苦味、複雑さ、バランスのとれた辛口白ワインに仕上がりました。可能な限りの亜硫酸添加量の低減に向けた自家取組を続けて参りましたが、2022は全アイテム無添加(サンスフル)、(参考:2018/40→2019/30→2020/20→2021/10→2022/0 ppm)。亜硫酸低減の効果か、以前に比べれば早めに開いてくる印象がある一方で、熟成潜在力が不明(5年程度か)、纏まりと深みを引き出すためにも、最低でも1年、出来れば2~3年ほど熟成させると大きく変化して来ると期待します。どのように熟成変化するのか今後見守って頂ければ幸いです。

    〇モンガク谷2022 杤 tochi

    フィールドブレンド・シリーズ「モンガク谷」のフラッグシップワイン、ピノノワール主体のアイテム、「杤(とち)」。ラベル原画として採用された、絵本「モチモチの木」に出てくるシンボルツリーがこの杤の木で、別名「七葉樹(しちようじゅ)」。7品種から織りなされる繊細さと複雑さ、そしてその可能性に向かい合って頂けたら幸いです。

    セパージュ:ピノノワール70%、シャルドネ12%、ピノグリ9%、ソーヴィニヨンブラン4%、ピノタージュ他5%
    アルコール分13.0%、MLF有、内容量750㎖、生産本数5,465本(ロウ色:青系)
    小売希望価格:4,500円/本(税抜)
    テイスティングコメント:色は透明感のある赤みを帯びた淡い黄金色。香りは繊細な芳香の中にアプリコット、シトラス、ハチミツ、洋ナシのコンポート、ナッツ、ハーブ、樹木、スモーキー等。味わいは心地よい苦みの中にスパイシーさと塩味と酸、出汁のような旨味、香ばしさ、黒ぶどう由来の淡い渋み、繊細ながら非常に複雑。長い余韻、辛口、ミディアムボディー。大きめのワイングラスでやや高めの温度帯。抜栓後の不安定さと変化の激しさあるも、料理との相性に高い期待。今後少しの亜硫酸添加必要か。少なくとも1~2年ほどの熟成、可能であれば3~5年くらいの熟成を期待。(1月試飲時点)。

    < 杤(栃)について >
    英名 :Japanese Horse-chestnut
    分類 :トチノキ科トチノキ属
    原産等:日本にのみ自生、特に冷涼な東北・北海道南部に多い
    誕生花:5/21
    花言葉:贅沢 豪奢 大才 博愛 健康
    その他:・別称は「七葉樹(しちようじゅ)」、小葉が7枚であることに由来
    ・十(とお)と千(ち)を掛ければ万になることから「とちの木」を意味する「杤」という字が成立、十と千は「たくさんあること」を表す
    ・パリのシャンゼリゼ通りの街路樹で有名な「マロニエ」は近縁種。栗の仲間との誤解と欧州で馬の治療薬に用いられた事から「ウマグリ」とも呼ばれる

    〇ワイナリー紹介

    モンガク谷ワイナリーは、2018年に始まった北海道余市町登地区にある「フィールドブレンド」に特化したワイナリーです。ワイナリー建屋は、札幌軟石の外壁で囲まれた「半地下の石蔵造り」。2018より順次アイテムを増やし、フィールドブレンド・シリーズ「モンガク谷」を展開しております。皆様に北海道・余市におけるフィールドブレンドの可能性と奥深さを感じて頂けたら幸いです

    ●フィールドブレンド・シリーズ「モンガク谷」
    フィールドブレンド・シリーズ「モンガク谷」は、余市のテロワールが生み出す、綺麗で広がりのある酸を基調としつつ、繊細ながらも、黒ブドウによってもたらされる軽妙なタンニンが程よい骨格と立体感を演出する特有の辛口・混醸ワイン。フードフレンドリーであることが最大の特徴のひとつ。フィールドブレンドならではの複雑かつ一体感のあるアロマは、多様な食材や、出汁、ハーブ、スパイス等を巧みに使い、繊細ながらも、複雑で、重層的な風味を生み出す料理と好相性。やや大きめのグラスでゆっくり温度を上げながら、その変化を楽しみ、繊細な香りと味わいを存分に引き出して頂けたら幸いです。

    ●フードフレンドリーなペアリング
    ぺアリングは面白い、例えば「酸」でいえば、食材かソースつまり料理自体に酸がある「調和型ペアリング」あるいは(酸のある)ワインと(酸のない)料理が口中で結び付くことで完成する「補完型ペアリング」など、料理とワインのペアリングにおいて、個々人の好みのペアリングは実に様々。これまでの少ない経験から言えば、食材やソース(味付け)に一定以上の「旨味」と「酸」、そして「複雑さ」を少しだけ持たせると、モンガク谷ワインとの相性が一層向上する印象があります。フードフレンドリーで守備範囲が広く、日本料理の「八寸」のような、季節や地域性の光る趣向が凝らされた、逸品の数々にもそっと寄り添ってくれると期待されます。
    帆立貝、海老、牡蠣などの海鮮をはじめ、魅力ある多様な旬の食材と「ソース」「出汁」の優しい味わいが、複雑かつ重層的に広がる料理、山菜や野菜・魚や豚等の内臓類のような「苦み」のある食材、ニンニクなど具材の持ち味を最大限に引き立ててくれる「ハーブ類」、トマト(野菜)やキノコなど旨味のポテンシャルがある植物性食材、調味料関係では、スパイシーなオリーブオイル、ミネラル豊富な岩塩、旨みが引き立つ醤油などの発酵性調味料等がお薦め。旨味の増強は、食材自体あるいは食材の組合せ等による相乗効果や前調理(乾燥・塩漬け・発酵・酵素利用等)、タンパク質の変性利用、すなわち加熱(速度・度合・表面・低温調理等)or酸を利用した非加熱調理・酵素利用による旨味増強等々、料理の世界の広がりは無限大で魅力的です。

    (参考):旨味成分は大きく3系統(アミノ酸系・核酸系・有機酸系)に分類。昆布・野菜
    類、発酵食品に多く含まれるグルタミン酸(アミノ酸系)。核酸系はリン酸を含むグアニル酸(干したキノコ類等)とイノシン酸(煮干し、鰹節、魚、肉類等)。窒素を含まない有機酸系は貝類に代表されるコハク酸。

    食材/ソース × 旨み × 酸 × 複雑さ(苦み・塩味・スパイス/ハーブ等々)

    モンガク谷ワインとの素敵な組合せ(ペアリング)を見つけたら、是非共有頂けると嬉しいです。

    ●ワインの名称
    2018から「ワインの名称」を私たちの大好きな「木」の名前とし、それをシリーズ化
    数多あるワインにそれぞれ個性があるように、「木」にもそれぞれ個性があります。
    木の個性に「ワイン」と「思い」を重ねて命名しました。全国津々浦々には、木をはじめとする「自然物」の名前にちなんだ、珍しい地名や人名も数多く存在、日本らしさが表現される一つの形だと捉えています。私たちのワインが少しでも多くの、各地の方々にお受け止め頂き、そして向かい合って頂けたら幸いです

    ●私たちのワイン造り
    私たちは、標高の高い自社一枚畑に異なる品種を植え、7品種のブドウを「混醸(こんじょう)」、主に以下3点をイメージ、野生酵母による自然なワイン造りを目指しています
    1.冷涼産地らしい酸味、2.適度な苦味、3.複雑な香味
    ※「混醸」・・・ 複数の原料品種を少なくとも発酵初期段階までに混ぜて醸造すること
    ※「7品種」・・・ピノノワール、シャルドネ、ピノタージュ、ピノグリ、ソーヴィニヨンブラン、ピノブラン、ゲヴェルツトラミナー
    ※当方ワインは、無濾過・無清澄のため、瓶内にオリや酒石、また若干の気泡が出やすくなっています。ややにごりを感じるかもしれませんが、品質には問題ございません。澱・酒石が気になる場合は、必要に応じてデキャンタージュをお願い致します。
    ※可能な限りの亜硫酸添加量の低減に向けた自家取組を継続中(2022は栢杤楢紅桧
    全アイテム0ppm無添加)。

    ●ラベルのデザイン
    ラベルとして選ばれた絵本の原画が山の神様の「夜祭り」を表現したシーンであることから、2018の自家醸造開始を機に、従来のラベルをシックなトーンに更新。色とりどりの丸玉は集った神様たち、お月様を背後に佇むシンボルツリーの杤(とち)の木と神様たちが表現された夜景が、まるでクリスマスツリーのよう。7つの品種から1本のワインとして生み出されるモンガク谷のフィールドブレンドのイメージがこの原画にシンクロすることからラベル原画として採用されました。また、臆病な幼子の勇気が描かれたこの絵本の英名は「The tree of courage」(勇気の木) 、次の世代のためにも、日常の中のほんの小さな、自分だけのチャレンジを慈しみ、そして明るく、焦らず、じっくりと歩んで行きたいものです

    最後まで長文をお読み頂き、誠に有難うございました。引き続き宜敷くお願い致します。

    ※今後掲載情報を段階的に縮減することを予定しております。以上